出典
参考文献、記事
Hospitalist 10巻3号 (2023年2月発行)
https://webview.isho.jp/journal/toc/21880409/10/3脊髄梗塞 spinal cord infarction目次 1 0:脊髄血管の解剖2 1:原因3 2:症状と解剖の対応関係4 3:症状 clinical manifestations5 4:脊髄MRI検査6 5:診断7 6:治療 0:脊髄血管の解剖 ・横断面 以下に横断面を載せました。理解する
病態
動脈硬化リスク因子のある患者に発症することがほとんどであり、基本は50歳以上で突然発症の疼痛を伴い、発症直後から神経症状が出現することがポイント。
詰まった血管によって神経症状が異なり、例えば前脊髄動脈が詰まれば麻痺や温痛覚の障害、膀胱直腸障害を呈する(いわゆる前脊髄動脈症候群)。
以下、医学事始(https://igakukotohajime.com/)から抜粋です、神経内科の先生は、ぜひ上のサイトの記事を読んで欲しい笑。
脊髄内の病変では疼痛は起こりませんが、脊髄梗塞では周囲の神経根や硬膜へ虚血も同時に起こることで疼痛が起こります。通常脊髄疾患では背部痛は起こらないため、脊髄梗塞との鑑別点として重要です。
また、動脈が詰まっても側副血行路などの関係で、きっちり左右対称の神経症状が出現するわけじゃないみたいです。なので
非対称性や片麻痺→脊髄疾患は否定!!!
とはならないのでご注意を。
身体所見
前脊髄動脈閉塞では温痛覚障害、両側錐体路が犯されることが多いため対麻痺などを呈することが多いです。
腱反射については上位ニューロン障害なので亢進!!
、、、、、と言いたいところですが実際は様々です。
例えば前脊髄動脈症候群の場合だと脊髄の前角細胞が傷害され、ここは下位運動ニューロンの根本の部分なので障害レベルの(あくまでも梗塞を起こした範囲のみ)腱反射は消失することとなります。多分babinski反射も陰性になるんじゃないですかねぇ。
逆に前角細胞を避けた脊髄梗塞の場合、例えば側面の方が障害され皮質脊髄路を障害した場合は梗塞レベルから下の上位運動ニューロン障害なので腱反射は亢進するはずですね。
後脊髄動脈で後索の障害の場合は錐体路に関与しないので腱反射も普通で異常反射も出ないのではないでしょうか。
、、、、、、、、、、、、という感じで脊髄病変でも様々なタイプの様相を呈し、判断が非常に難しい。
これを救急の場で正確に判断しろと言う方が無理です。なので大脳病変だと一元的に説明できない腱反射の所見、異常反射がある場合は脊髄病変として疑う、という認識でいいのではないでしょうか。
むしろ下記の所見を見つけに行く方が脊髄病変の診断に寄与するのではないでしょうか。
脊髄病変を疑うポイント
- レベル境界がある
- 膀胱直腸障害
- 解離性感覚障害の有無
画像
診断のgold standradは脊髄のMRIです。
ただし発症早期はMRI陰性であることがあり、疑った場合は時間をおいて再検する必要があるかと思われます。
ただ、脊髄梗塞を初手で診断することはかなり困難です(以下、東京大学;脳神経内科KS氏に聴取)。というのも脳梗塞よりはるかに頻度が少ない、鑑別が多い、MRIのDWIを撮像しないとわからない(ルーチンではDWIは撮像しないようです)、DWIでも解像度が低いとよくわからない、、、など様々な難点があります。なので片麻痺など非典型的な例では救急外来で診断するのはまず不可能です。
鑑別疾患
必ず一度は考慮して欲しいのが大動脈解離(椎骨動脈含む)です。痛み+神経症状だとどちらも鑑別にあがるし、大動脈解離→続発性脊髄梗塞と合併した例もあるため、一度大動脈の評価はした方がいいかと思われます。
他の鑑別としては脊髄硬膜外血腫があります。プレゼンテーションや神経診察での所見は非常に似ているのですが、鑑別点が、以下です
突然~急性発症+背部痛を伴う脊髄障害として、「脊髄硬膜外血腫」が重要な鑑別に挙げられます。基本的に硬膜外静脈叢からの出血・血腫が脊髄を圧迫するために起こり、静脈性出血のため、通常疼痛出現から血腫が増大して脊髄圧迫・神経症状出現までに数時間程度のタイムラグがあることが鑑別点となります(脊髄梗塞は疼痛直後から通常神経症状が出現するのに対して)。
医学事始より引用
脊髄硬膜外血腫は体動で頭痛が増悪することもあり(そういった症例報告が散見され、crowned dens症候群を当初疑われていた症例もありました)、物理的な血腫による圧迫が体動(というかその部分の脊椎が動く運動?)で増悪するんでしょうね、、、、多分ですが笑。
体動による増悪があれば少なくとも脊髄硬膜外血腫>脊髄梗塞となるのではないでしょうか。「体動による増悪」では筋骨格系だけでなく硬膜外血腫も鑑別にあげるべき、というpearlは私が勝手に作りました、正しいかは知りません笑。この点も脊髄梗塞とは鑑別できる点かなぁ、とは思います。