はじめに
「先生早く指示いれて!!」
忙しくて重症も多い救急外来では、こんなことを言われたら思考停止する研修医、内科医が多いのではないか。
しかし医師が指示を出さないと回らないのも救急の性。思考停止しないように、やるべきことを順序立てて整理しよう。
そして私は救急外来での最大のポイントはトリアージだと考えます。
救急外来のポイント
→患者を3パターンにtriageして対応
- 重症 →優先処置
- 中等症 →採血含め、検査をorder
- 軽症 →帰宅or翌日受診を指示
- ABCD+バイタルcheck
→問題あれば重症患者
→「さるもちょうしんきがすき」- 簡単な病歴聴取+診察(H and P)
→red flagがある場合は中等症
→検査をorderして次の患者へ
→一通り患者を見たら再度H and P

救急外来での働き方
ABCD、バイタルcheck
病歴うんぬんよりABCDの異常かバイタル異常があれば優先して診察にいきましょう。
ABCDの評価はこの記事でまとめています。
バイタル異常について
☑️BP、HR、SpO2のどれかが異常
→重症とみなして対応
※普段とのバイタルも比較せよ☑️頻呼吸のみ
→中等症だがred flagな病歴なら優先処置
早めに血液ガスをとってアシドーシス評価
バイタル、ABCDが狂っている場合はそもそも外来で順番待ちしている場合ではありません。処置室にいれて優先対応です。
病歴と身体診察
病歴の取り方を軽視する先生は
「話を聞くと身体診察に時間がかかりすぎて外来全体のリズムが崩れるから検査を先にいれなさい」
とかいうらしいですが、なぜ
「完全に病歴や身体所見を聞き終わらなければ検査を入れてはいけない」のでしょうか?
私は簡単に病歴とバイタルを確認したら
救急外来での初手の確認ポイント
①主訴に対して検査なしで診断できる疾患かどうか
②主訴に対するred flagがあるかどうか
を考えるようにしています。
例えば
発熱→風邪かどうか
消化器症状→胃腸炎かどうか
胸痛→肋軟骨炎、帯状疱疹かどうか
めまい→BPPVかどうか
それで「どうも違うな」と思った瞬間に一通りの検査orderを出します。red flagがある場合も同様です。
(もちろん「これは風邪だろう」と診断できればそのまま帰していいです)
特に採血は検査待ちの律速段階になるので早めにいれるようにします。
で、検査orderして重症そうであればそのまま追加で病歴や問診、場合によっては処置をすればいい話ですし、他に重症の患者がいて「この人は1時間放置しても問題なさそうだ」と思ったら他の患者の診察にいきましょう。
検査もはじめの1回のorderで完璧にいれる必要はありません。追加で問診や身体所見をとると
”あの疾患に対する検査を入れてない!”
と思い直すことなどざらにあります。その都度追加でorderすればいいのです。
その都度いれていても、どうせ採血がまだ出ていない(私は採血の待ち時間を逆手に取ってこういうことをよくします)ので致命的な遅れになることはほとんどないはず。
もし検査の遅れが問題になった症例があったとすれば、はじめのトリアージの部分を見直す必要があると思います。
問診と検査、どっちを先にやる?
【患者診察の基本的な流れ】
①主訴を聞いて鑑別疾患を思い浮かべる
②上記鑑別疾患の典型的な病歴を思い浮かべながら
病歴聴取&身体診察(H and P)
③鑑別疾患に対する検査
④診断確定したら治療
普通診療の手順は
H and P→検査→治療
となりますが、救急外来だとバイタルが崩れているは検査結果が出る前に(下手すると検査を出す前に!)介入する必要があります。
そこでトリアージという概念が生まれてきます。
ここで言うトリアージとは平たく言えば
「検査結果が出るまで放置していいかどうか」
を判断することです。
基本バイタル変動、ABCD異常がある場合は、補液や酸素投与、昇圧剤など治療介入し状態を安定させて、あらためて問診や検査をすることととなります。
まず確認するのは
●「性別と年齢」
●「簡単な病歴」(最低限主訴の詳細とred flagだけでいい)
●「呼吸数含めたバイタル」(必ずチェック!!!)
本来病歴こそ一番大事な情報で、患者自身から詳細な病歴を聞くことが検査のオーダーよりも優先すべきではある。
が、基本複数人の患者を相手にしている救急外来では、病歴聴取に詳細に時間を割けないこともあるでしょう。
そこで部下か、看護師でもいいので新患がきたら以上の3つを確認してもらいます。
この時点で「これはやばい」と思う患者がいたら放置している場合ではない。すぐに話を聞いて診察しよう。
バイタルはどんな軽傷そうな患者でも確認しましょう。walkinでショックが来ることもあるあるです(特に若い人)。
さるもちょうしんきがすき
以上のどれかにあたり、問診よりもまず治療が先だと判断した場合は
「さるもちょうしんきがすき」

に従って指示を出そう。
さ →酸素投与(バックバルブマスクも準備)
る →ルート確保(18Gなど太めのを正中で、複数あれば直よし。CVは補液ルートとしては役に立たないので初手では不要)
も →モニター装着
ちょう →超音波エコー
しん →心電図
き →胸部Xp
がす →血液ガス(ルートからは充分量の血液が取れないことが多いので、鼠径動脈から採血分もまとめてとる)
採血はとりあえず「血算生化凝固!」と言っておけば良いです、項目は後で追加できるのでスピッツの本数だけ充分採取しておけばよし(NH3,トロポニンなど別スピッツなこともあるので、施設ごとに何種類スピッツがあるか確認しておくと緊急時に指示が出しやすくなります)。
点滴もとりあえず細胞外液でいいです。「高ナトリウムだったらどうすんの!」と声が聞こえてきそうですが、とりあえず血管確保していつでも点滴を流せる状態にしておくことが重要であって、心配なら流速をほぼ0にしておけばいいでしょう。最悪血液ガスの電解質の値を確認してメインを入れ替えればいいですし。
ちなみに、「さるも」の部分に関しては「奥の手」も知っておきましょう。
さの奥の手
リザーバーマスク
→airway
→アンビュバック(この時点で循環器やICU医師は呼びたい)
→挿管(→ECMO)
るの奥の手
生食全開プラス下肢挙上
→ポンピング、アルブミナー250mL (この時点で循環器やICU医師は呼びたい)
→心臓マッサージ→ECMOなど補助循環
もの奥の手
モニター
→不整脈あれば除細動器、経皮ペーシング
最悪
①マスク換気(アンビュバック)
②心臓マッサージ
やってれば(物理的には)死にません。
これを覚えておくだけでだいぶ余裕が持てるはずです。
この2つを周りのスタッフに任せて医師はこれからの計画を立てましょう。
急変対応
院内で突然心停止、意識レベル低下などがあったら、、、、、覚えてください。
急変対応の語呂合わせ→A級ひじき
A→ABCDの確認
ひ→人を呼ぶ
じ→除細動の準備
き→救急カートの準備’※上から順番にやりましょう
さて、急変時はまずABCDの確認です。
以下の方法なら十秒でチェックできます。
詳細な評価は別の章でやるので。
Airway→会話できたらOK
話せてたら基本気道は大丈夫です。閉塞しかかってる人はそもそもしゃべれんし、聴診器なくてもヒューヒュー聞こえます。
B→患者の呼吸に合わせて呼吸して「早くね?」と思ったら異常
呼吸数数えんの時間かかる!って人はこれやってみて。五秒で異常がわかるから。
C→手を触れて冷たければ異常、脈触れなければ心マッサージ
もちろん「路上で倒れてました、、、」とかなら病状にかかわらず冷たいの当たり前なんですが、急外ではovertriage当たり前なので抹消冷感あり→ショックかもと判断しましょう。
D→付き添いに「いつもと同じですか?」と聞く。
「もともと認知症なんじゃないの?」と思った患者でも、家族が「様子がおかしい」と言えばやっぱりおかしいんです。
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さて、これを読んでいる人は基本医師のはずなので、急変対応の際にリーダーとなる可能性があります。その際の心得を紹介しましょう。
急変対応リーダーの心得
①リーダー以外に発言をさせない
②気道確保、心臓マッサージ、薬物投与、記録の担当を決める
※各担当はリーダーから指示だし
①好き放題みんなにあれこれ言われると統制がとれなくなります。リーダー以外は基本作業に集中してもらいましょう。
実際どうすんのよこんな状況
case 1
脈がふれてるかわからない、、、、
→会話が可能であれば脈はあるので心臓マッサージ不要
レベルがおかしいならnearCPAとみなして心臓マッサージ開始※鼠径の動脈だと動脈硬化で
そもそも脈がふれにくいことがあります。
橈骨動脈もカテーテル経験者だと
詰まっていることがあるので
一番判断しやすいのは頸動脈だと思います
case 2
呼吸しているか?
→呼吸音を聞くより胸郭の動きを見た方がわかる
服は脱がせていい
→胸郭に手を当てるのもわかりやすい※どうもあやしいなと思えば
アンビュバックで換気しておけば確実
一番最悪なのは適応あるのに心臓マッサージや気道管理をしないことです。迷ったらやる、くらいの気持ちでいいと思います。