不整脈の対応;①心房細動

医学総論

はじめに

※あくまで非循環器内科でも対応できるようにしよう薬物も絞っています。

病棟での心房細動ってきくとあわあわしてしまう人多いですが、意外に緊急対応が必要な状況って少ないんですよね。ここでは主に緊急の薬物対応について語ります。

rate or rhythm?

僕が研修医の頃って以下のレートコントロールもリズムコントロールも結果変わらないからどっちでもいいよって感じだったんですよね。それが2023年にACCでのガイドラインでの改訂があって基本洞調律化を狙えるならとっととアブレーションに回しましょう(特に発症して間もない方)って話になってきたんですね。

レートコントロール(rate control)

βブロッカーやカルシウムブロッカー(ワソラン、ヘルベッサーなど)、ジギタリスで
安定期で安静時のレートを110以下に下げる
(急性期のレート目安に関してはまだコンセンサスがない)

リズムコントロール(rhythm control)

電気的除細動、アブレーションなどで
洞調律を目指す治療

急性期の治療について

そもそもレートを下げる必要は?

病棟から「心房細動でレートが速いので指示をください」って電話は循環器内科だったら100回聞いたと思いますが、そもそも本当にレートを下げることに意味があるのか、そもそもなんでレートが速いんだっていう頭に切り替えて欲しいんですよね。少しそれますが洞性頻脈の際の鑑別を書いておきます。

洞性頻脈の鑑別(Sinus TACHIEE)

Shock,,,,,,,ショック←絶対に除外すること
Tablet ,,,,,,,,,薬剤性
Anemia,,,,,,,,貧血、急性出血
CHest,,,,,,,,,,心肺関連の低酸素(心不全など)
Infection,,,,感染症
Emboli,,,,,,,,肺塞栓
Endocrine,Basedowなど内分泌疾患

当たり前ですが、上記でレートが速い人にβブロッカーやワソランとか使ったら

血圧が下がるのを頻脈で代償している

その頻脈をうち消す

当然血圧が下がってショックになる

となります(かなり極端に書いてますが、大まかな理屈はこんな感じです)。

心房細動も同様で、ぶっちゃけ一過性に130や140見えるぐらいの人はほっといて全然OKなんですが、何かしら症状を訴えて、HR120以上が持続している状態であれば、心房細動のレートを下げることよりもその頻脈の原因を突き止めるほうが優先です。

(※このHR120っていうのも全然エビデンスはないのであくまで参考値なんですが、一番確実なのは普段のHRを参照して、20-30以上上がっているなら有意にとったほうがいいでしょう)

よくあるのが心不全で頻脈になっていたり、カテーテル後の穿刺部出血で頻脈になっていたり、、、、、、こういった人にβブロッカーやカルシウムブロッカー(CCB)でお茶を濁すのは病態を悪化させるので絶対にやめてください。

こういった原疾患が何かしらあって頻脈になっている場合はもちろん原疾患の治療が優先されます。心不全だったとしても超急性期にはβブロッカーやCCBは使わず、血管拡張薬や利尿剤といった急性心不全の加療をすることが大事です。

じゃぁ心房細動自体に関して介入する時って結局どんなときかと言われると、明らかな原疾患がなさそうでかつ何かしらの症状がある場合(呼吸苦、動悸、胸痛など)であって、無症状であれば基本経過観察で大丈夫です。
(もちろん循環器内科が介入して抗凝固や薬物治療が入っている前提ですけど。無症状で心房細動による頻脈で当直callされても基本無視→循環器主治医に内服調整を依頼でOK)。

急性期の心房細動加療(HR)

急性期の心房細動に対する考え方

①原疾患があるか
→あれば原疾患の介入について検討
※甲状腺ホルモンはルーチンで測定

②ショック、もしくは血行動態が不安定
→電気的除細動(DC)を

③有症状の心不全(非代償性心不全)
の合併があるか
→あれば心不全加療を優先
(+アミオダロン、DCの検討)

④上記、すべてnoでかつ症状がある
→βBやCCBでの薬物治療を考慮

2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Af Guideline

実際の治療指示について

★は内科にかかわるならぜひ身につけて欲しい治療法。ぶっちゃけアミオダロンとDCさえできればどうにかなります。

逆にワソラン含めたカルシウムブロッカーはどんどん活躍の場がなくなってきているので、非専門医が使うのはお勧めしません。(慣れてさえいれば)電気的除細動やアミオダロンのほうがリスクが低く使えることは知っておきましょう。

★電気的除細動

※まず大前提として抗凝固薬の長期内服(最低3週間)か画像検査での心内血栓の除外(経食道心エコーTEEか造影CT)がされていなければDCしてはいけません。

※DC前の確認事項(ガイドラインにも明記)

①抗凝固薬の長期内服
(最低3週間)

②もしくはTEEか造影CTで
心内血栓が否定されている

ちなみにDC後で洞調律化してもガイドライン上4週間は抗凝固薬が必須です(心筋が電撃でstunして特に左心耳血栓ができやすくなっている、、、、とか聞いた気がする)。勝手に終了しないように(というか終了するかどうかは循環器内科に依頼をかけるべき)。

実は新規発症の12時間以内のAfで血栓リスク低い(CHADS-VASc1点以下)なら上記条件を無視してもいいかも、とガイドラインに記載がありますが、そもそも本当に発症から12時間以内なのか(無症状のAfってよくあるんですよね)が証明不可能です。

なのでDC前の確認事項はどんな人でも確認しておくべきで、もしせざるを得ない場合(ショックに類する、もしくは不可抗力でしなければいけない)はICしておくことが必須。

IC内容を要約すると「脳梗塞になるリスクがあるけど、放置する方が辛いor死亡リスクが高いので今から施行します」って説明して同意をもらったって言う旨をカルテに記載してDCです。DC前にヘパリン3000-5000単位ぐらいivしておくといいでしょう(多分おまじない程度の効果しかありませんが)。

エネルギーは100Jで開始、洞調律化しなければ50Jずつ上げていきます。

あと、DCパッド貼る位置って意外と側面に貼らなくちゃいけないってご存知ですか?

以下はRAFFtrialという試験でのDCパッドの位置なんですが、左のパッドはほぼ側面に貼るイメージです。前面メインに貼ってはいけないので注意しましょう。

(RAFF2trialより引用)

あ、もちろん鎮痛、鎮静は必須です。血圧に余裕がないときは以下の表に従って行いましょう。

状態別処置前鎮静

①ショックに類する状態
(もしくはpreshockで
鎮痛鎮静薬の用意がないとき)

一刻も早くDC
鎮静で心停止の可能性もあるので
処置前行けなくてもしょうがない

②DCが必要だが
血圧に多少余裕がある(90-100程度)

ミダゾラム(+ケタミン)
(https://naikainokakekomidera.com/drug1/#toc5)

③上記以外
慣れている鎮静薬なんでも

★アミオダロン

アミオダロンの静脈内投与も低血圧を伴うことがあり、特にボーラス静脈内投与、次に初期急速投与で顕著にでます。何回も言いますが、血行動体に不安があるならやはりDC最優先ですし、そもそも不安があれば循環器内科に相談するべき静注薬です。

、、、、、が、正直低心機能でも心不全でも使える薬剤なので、安全マージンが広いいい薬だと思います。やり方だけでも知っておきましょう。

あと、使用前に甲状腺ホルモンとKL-6(副作用に甲状腺機能異常、及び間質性肺炎があるため)の採血は取っておくと丁寧です。

アミオダロン(アンカロン)(150mg/3mL)
※溶媒はブドウ糖のみ使用可

5/6A(125mg/2.5mL)+ブドウ糖100mL
600ml/hで10分で初期急速投与
※状態によってはskip
※ショック、心停止リスクがあるとか

②5A(750mg/15mL)+ブドウ糖500mL
33ml/hで6時間投与した後(200mL投与後)
17ml/hに減量し継続

アミオダロン塩酸塩静注150mg「TE」心室細動、血行動態不安定な心室頻拍で難治性かつ緊急を要する場合の投与方法(1-2日目)

(引用;https://med.toaeiyo.co.jp/contents/amz-manual/amz-manual12.html)

静注βブロッカー

あらかじめ言っておきますが、このタイプの点滴(オノアクト)は現役循環器内科の僕でさえここ1年半使ってない薬物です(他の循環器内科にいったら怒られるかもしれませんが、正直使わなくても困ったことないです)。

なぜなら、、、、もちろん陰性変力作用(薬理学上EFが悪くなる)があるので心不全悪化リスクがあることもそうですし、あんまりスカッとレートが下がった経験がないんですよね笑。あと、薬価が高いのでバカバカ使うと上から怒られます。

以前所属していた大病院の循環器病棟でもほぼ使っていなかったので、やはり必須の静注薬ではないかなと。大動脈解離には、薬理学上は一番いい静注薬なんですけどね〜〜〜〜。キレも20分程度で早いし。

一応レシピだけ載せておきます。

ランジオロール(オノアクト)(50mg/1V)

3V(150mg/3V)+溶媒50mL 計50mL
3ml/hで開始(血圧不安なら2ml/h)
安静時HR110以下を目標に
1ml/hずつ調整
1-10ml/hの間で管理

※血圧が90以下になる場合は
即時中止

静注Mg

記載途中

静注Caブロッカー

上記で説明しましたが、こいつらガイドラインのせいでどんどん活躍の場が減ってます。

CCB使用の前提条件

・ショックじゃない

・有症状の心不全じゃない
(非代償性心不全ADHFじゃない)

・器質的心疾患がない
(特に虚血性心疾患)

★HFrEF(EF<40%)じゃない
(EF>50は欲しいとこ)

上の条件みて「うわ」ってなりませんか笑。
さらにめんどくさいのが、★の条件が結構曲者でしてHRが速い時ってエコーでEFの評価ができないんです(HR150とかだと心臓が縮む暇がないので普段のEFより確実に過小評価になります)。本場の循環器内科でも評価が難しいのに、それを非専門医ができるかって言うと、、、、、、、。

ってなると急性期にCCB使うシチュエーションって以下のような状況しかないように思えるんですよね。

Afに静注CCBが必要なシチュエーション

・ショックでもADHFにもなってない
・でも動悸などAf由来の症状がある

・過去半年から1年程度で
心エコーでEF>50%と評価され
MIなど器質的疾患がない
・もしくはCCBdripでの
対応が複数回されている

しかも病棟で心房細動でcallされている人って、大体心不全で入院しているじゃないですか笑。

ってなるとどうしても「この人心不全が悪くなって心房細動のHRが上がってるんじゃないのか?」っていう発想が頭に出てくるので、どうしてもレートコントロールを積極的にする気持ちにならないんです(前述通り、オノアクトは全然レート下がらないことが多いので)。

そしてここがキモなのが、入院中なら大体長期で抗凝固薬が入ってます笑。なのでDCかけれちゃうんですよね。もし内服期間が足りなければ経食道心エコーで血栓チェックだけしてDCかければいいですし(ここまでできるのは循環器内科でしょうが)。

上記通りガイドライン上かなり使いにくくなったCCBですが、それでもやむを得ずレートコントロールをしなければならない状況で、かつ大病院じゃない場所(除細動に慣れているスタッフがいない、アミオダロンをそもそも置いてない)ならやむを得ないでしょう。ワソランよりも陰性変力作用がマシなジルチアゼムのレシピを書いておきます。

EF<40でもなんとか使用できるように、かなり薄めでレシピを書いてます。

ジルチアゼム(ヘルベッサー)(50mg/1V)
(※以下添付文書より大分薄め)

1V(50mg/1V)+溶媒50mL 計50mL
3ml/hで開始(血圧不安なら2ml/h)
安静時HR110以下を目標に
1ml/hずつ調整
1-10ml/hの間で管理

※血圧が90以下になる場合は即時中止
もしくはノルアド5A +45ml 2ml開始
(SBP100以上キープするように適宜増減 max10ml)

※急性期は感染や頻脈誘発心筋症など、血圧が低下しやすい状況になるので、ノルアド併用する事もある

んで最後に、ベラパミルも書いておきます。

使用状況として僕は、心不全を発症していない、HFpEFで、突然Pafを発症して苦しいっていう病歴でしか使用していません。基本持続の使用はせず、ivもしないdripでの使用に抑えた方が無難です。

ivをしないのは、やはり陰性変力や変時作用が強く、ショックになってもおかしくない薬物だからです。添付文書上は2分程度でのivは許可されていますが、僕はdripでの使用にとどめるようにしています。

ベラパミル(ワソラン)(5mg/2mL)

1A(5mg/2mL)+溶媒50mL 計50mL
30分かけてdrip

※血圧が90以下になる場合は
即時中止

抗凝固剤

もうね、OACの成績がいいのでOACなんでもいいから飲ませてください笑。個人的には非循環器内科ならリクシアナ飲ませておけばいいと思います。

腎機能悪い場合はヘパリンの持続でしょう。Wfは夜間いきなり導入する必要性はないので緊急時はヘパリン流しておけば十分です。APTTのフォローは必須ですけど。

あ、透析患者のAfは抗凝固のエビデンスがはっきりしていないので勝手に導入してはいけません(そもそもOACは禁忌)。投薬については循環器内科に投げるでいいと思います。

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