浮腫の対応、鑑別①救外編

医学総論

はじめに

浮腫を主訴に来た患者がemergencyな患者であることはほぼありません。しかし、心不全など危険な疾患の兆候であることも確か。

この記事では全身性浮腫(両側に浮腫を認める場合)の鑑別について語っていきます。

H and P

浮腫をきたす疾患、、、、、、だけで考えると無限にあります。悠長に鑑別している暇があるのかどうかで鑑別は分けた方がいいでしょう。

救急外来や内科初診では、緊急性が高く頻度の高い疾患群から考えるべきです。なのでスクリーニングとしては以下4つの臓器に注目して診察、検査をorderすべし。

浮腫をきたす臓器障害
(スクリーニングver)

1️⃣まず以下の4疾患群を念頭に診察

  • 心不全
    →呼吸苦がある場合は必ず鑑別を
  • 腎不全
  • 肝硬変
    →飲酒常習、HBV、HCV、刺青など
  • 甲状腺機能異常
    →Basedowからの心不全による浮腫も

2️⃣上記4疾患の確率が低ければ薬剤チェック

検査一覧

  • 採血、採尿
    BNP、肝酵素、腎機能
    TP/Alb、尿蛋白(定量)、尿沈渣
    d-dimer、PT/APTT
    TSH、FT4・FT3
  • 胸部Xp
  • 心電図

    (※以下検査前確率に応じて)
  • CT/腹部エコー
  • 心エコー

3️⃣上記の可能性が低く、片側性であれば

  • 蜂窩織炎
  • DVT

の2疾患をスクリーニング

スクリーニングの病歴聴取+診察

心不全は以下で解説しているので別記事参照。随伴症状として労作時呼吸苦がある場合、腎不全と共に鑑別にあがります。浮腫だけで来た心不全(症状が体うっ血のみ)なら外来で治療できるんですが、「呼吸苦もないしSpO2も大丈夫だから、心不全ではないでしょ!」って思い込みは危険です。

呼吸苦の症状がなくても胸部のレントゲンは必須です。意外に胸水溜まっていて、もう一度随伴症状を聞いてみると「そういえばここ数日動くと息がきれやすい、、、、」なんて訴えが出てくることも、、、、。

心電図も撮りましょう。無症状の心房細動がみつかったりしますしね(心房細動だけなら本来バイタル測定の際の脈不整で気づくべきですが)。

腎不全、肝不全は以前の検診異常の指摘歴(血尿や蛋白尿、肝酵素異常の指摘歴とか)を聴取、家族歴や喫煙飲酒歴も当然聴取。

眼瞼の浮腫は腎疾患、というより低アルブミン血症での所見ですね。もう少し詳細に言うと、低アルブミン血症では重力に反して眼瞼に浮腫が出現することがあります。

圧痕で凹まないnon pitting edemaの場合は脂肪・リンパ浮腫、甲状腺機能低下症が鑑別にあがります。眼球突出や便通、発汗などについて病歴聴取を。 機能亢進のBasedow病でも浮腫を呈することがあります(これは甲状腺機能亢進症のせいで心不全を併発している場合、高心拍出性心不全ってやつですね)。

肝硬変は元々の肝不全の指摘歴、肝腫大、腹壁静脈怒張、脾腫などの身体所見を確認。輸血歴や肝炎ウイルスの既往も確認したいところ。

甲状腺異常を示唆する身体所見は甲状腺腫大、便通異常、汗、眼球突出など、、、、ただし各所見は診断特性が高いわけではないので(しかも高齢者は非典型例が多い)スクリーニングでTSH、FT4測定は問題ないと思います(FT3まで測定するかは病院事情によります、保険点数的な問題笑)。

薬剤性

さて、上記の可能性がひとまず除外できたら薬剤性の鑑別です。

頻度として多いのはNSAIDs、Caブロッカー(特に降圧剤として使用されるジヒドロピリジン系のアムロジンやニフェジピンに多い)、甘草含有の漢方です。他にもあるので目の前の患者の薬剤は一通りチェックしましょう。

片側性

両側性浮腫のスクリーニングでひっかからず、片側性なら蜂窩織炎とDVTの検索で良いです。

浮腫の詳細な鑑別

さて、上記のスクリーニングで説明が付かなければ、緊急で治療が必要な可能性は低いです。下記の病態表に従って鑑別していきましょう。

浮腫をきたす病態

  1. 静水圧上昇
    • うっ血
    • 静脈閉塞・圧迫
  2. 血漿浸透圧低下
    (≒低アルブミン血症)
  3. 血管透過性亢進
  4. 薬剤性
  5. 粘液水腫
  6. リンパ浮腫、脂肪浮腫

上記の詳細な鑑別手順に関しては後日追記しますね笑。乞うご期待。

タイトルとURLをコピーしました