はじめに
低カリウム血症
参考文献
内科診断リファレンス(https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/106630)
INTENSIVIST(https://webview.isho.jp/journal/toc/18834833/7/3)以下の記事も低Kに対する対応がよくまとまってます
https://connect.doctor-agent.com/article/column489
central illustration


緊急性の有無
低カリウム血症の緊急性の有無
心電図異常か臨床症状があればemergency
- 脱力、筋力低下
(基本両側性、最悪筋麻痺による呼吸不全)- 心電図変化、不整脈の多発
QT延長、U波、心室性不整脈など- K<2.5
上記状況でなければ
内服での加療が望ましい
その他の臨床兆候として麻痺性イレウス(Ogilvie 症候群)、横紋筋融解症などを呈することも。K<2.5以下などの場合がほとんどですが。
まとめると症状か心電図異常があればemergencyです。K2.5以下でも早めの補正が望ましいと思います(ただし、全くの無症状かつ心電図異常もないK2.5以下を全例CVの刑に処すかと言うと、、、微妙なところですね)。
逆に症状がなく内服可能であれば経口での補正が望ましいです。点滴での補正は思った以上にKが上昇する場合があり、頻回のフォロー採血を必要とします。緊急性がなければ内服での対応が無難です。
K補充法の実際
低カリウムの治療法について
- 緊急性がある場合は中心静脈から補正
※嚥下に問題なければ内服loadingしても良い- 緊急性なければ定期内服開始
- 経口摂取不可かつ緊急性なければ
抹消静脈から点滴- 低Mg、Pがあれば同時に補正
さて、補充法については以下3パターンありますが、緊急対応の場合は中心静脈からの補正が望ましい。そして1時間ごと(最低でも補正前後)にKのフォローが必要になりますが、上記状況の患者であればAlineとってICU入室になるはずなので、特段手間にはならないでしょう。
ちなみにK注射の濃度、速度に上限があるのは静脈炎や過剰補正(高カリウム)による副作用を防ぐためです。ちなみに速度や濃度を守っても静脈炎になることがあるので、発熱患者の場合は点滴挿入部の確認を忘れずに。
ただ、高カリウムの副作用に関しては逐一フォローすれば防げるはず。頻回フォローが可能でかつ一刻も早く補正したい状況であれば以下の記載値以上の速度でも許されるでしょう。
当然限度はありますし、遅めの速度のほうが安全ではあるので、臨床状況や医療サイドの状況(頻回フォローができないなど)も加味して決めましょう。注射製剤は塩化カリウム、アスパラギン酸カリウムの2つを例にとりましょう。
注射用K製剤一覧
基本的には血中にKが残りやすい
塩化カリウム製剤で良い
- KCL補正液キット20mEq
K 20mEq/50mL
※ICUでの補正用、このまま投与可能以下の製剤は溶媒に溶かしたり
メインに混注して使用すべき
- KCL注10mEqキット
K 10mEq/10mL- KCL注20mEqキット
K 20mEq/20mL- アスパラギン酸カリウム注10mEqキット
K 10mEq/10mL
※Clが高めであればこちらの製剤を検討
ちなみに、有機酸カリウム製剤であるグルコン酸カリウムやアスパラギン酸カリウムは代謝物が重炭酸となるため、 それらの投与により代謝性アルカローシスとなる可能性があります。なので代謝性アルカローシスがある場合は塩化カリウムでの補充が良い、、、、という話を聞いたことがあるかもしれません。
まぁここに関してははっきりしたエビデンスもない領域なので個人的な意見を言わせていただきます。そこまで気にしなくていいです笑。
アシドーシス、アルカローシスに対する最優先課題は原疾患に治療介入する(そうしたら勝手にKは補正されていくはずです)ことなので、「この患者は代謝性アシドーシスだから、、、、どのカリウム製剤を使うんだっけ」とか製剤を選んでいる暇があるなら、原疾患の特定に尽力するべきかと。
緊急対応(中心静脈から)
※適応について
低K由来の症状がある場合
ICU入室中→1時間ごとに採血チェック可
モニター心電図装着下
※適応外(筆者考案)
K>3.5-4.0
症状がない
緊急時や重症患者の補正方法です。Kを高めに保っておきたいICU患者の場合(重症心不全は心室性不整脈予防にKを4.0以上にしておく場合があります、肝不全とかも)でも使用可能です。
K補正法(中心静脈用)
※CV挿入まで時間がかかるようなら
嚥下障害がないこと確認して
K製剤を100mEq程度内服
(例;KCL徐放錠600mg✖️12錠)
- 濃度 400mEq/L まで
- 速度 20mEq/h 以下
(※呼吸筋麻痺、VT/Vfなどの
致死的状況なら
40-100mEq/h以上でも可)☑️実例
K製剤 20mEq(1mEq/1mL)+溶媒30mL
2時間で投与
K 濃度 400mEq/L, 速度 10mEq/h
※「KCL補正液キット20mEq/50mL」
の組成と同じ※投与中は1時間ごとに
K値をチェック
さて、実際CV挿入するまで時間がかかる場合もあるでしょう。そんな時は内服で一度loading。
内服でKを40~60mEq内服すると、90分前後でK濃度が1.0~1.5mEq/L程度、内服でKを135~160mEq内服すると、2.5~3.5mEq/L程度上昇するという報告(Nicolis GL, et al. Arch Intern Med 1981;141:49. PMID:7447584)もあり、即効性もそこまで悪くないですよね。
ただ、徐放錠ってかなり大きく、12錠とか飲むことになるので、高齢者だと厳しい気が。胃管留置してKの液体製剤(K.C.L. エリキシル® (塩化カリウム))を流し込むって荒技も考えられはしますが、、、、カリウム製剤は胃腸障害が出ることがあるため、多量の水と内服することが添付文書で記載されています。嚥下機能が心配ならとっととCV確保したほうが早い。
もちろんloading後は最低24時間は定期的なKフォローが必要です。徐放錠だと効果の持続時間が長いですし、飲ませた量が量なので「Kが元に戻ったからフォロー終了しました!」と言って翌日とんでもない高カリウムになってたら、、、、ぞっとします。
K補正(内服)
さて、緊急ではないけどKの補充をしたい場合、経口摂取ができる状況であれば内服で構いません。
病棟管理のコツとしては、Kが3.5以下でかつ低下傾向であれば早めに内服を始めることですかね。特に循環器内科は利尿剤でK排出を促進することが多い。
K補正法(内服)
- KCL徐放錠600mg K 8mEq/錠
1回2錠を1日2回(粉砕不可)- アスパラカリウム K 5mEq/錠
1回2錠を1日3-4回(粉砕可)- K.C.L. エリキシル® K 1.34 mEq/mL
20-100mLを数回に分けて
水で10倍程度に薄めて飲用
K補正(末梢静脈)
上記補正を考慮される状況としては、経口摂取がダメ(嚥下がダメとか消化管が使えないとか)でかつ緊急性がない状態。
K補正法(末梢静脈用)
- 濃度 40mEq/Lまで
(※静脈炎の場合は濃度を半分、もしくは内服へ)- 速度 20mEq/h 以下
☑️実例
K製剤 20mEq(1mEq/1mL)+溶媒500mLを数時間で
K 濃度 40mEq/L
低Mg、低P血症の補正
低Mg、低P血症は低Kを助長するため、同時に補充したほうがいいでしょう。