はじめに
高カリウム血症は鑑別を考えるより治療介入が最優先です。不整脈により急変する危険性が高いので。
緊急性の有無
さて、何かの拍子で高カリウム血症に気が付いたとして、大事なことは緊急性があるかどうか。
高カリウム血症の緊急性の有無
- 心電図変化の有無
P波消失、wide QRS、VTなど- K>6.5以上
※不整脈が頻発している場合
腎臓内科に緊急透析の依頼
除細動機の準備
まず以上のような心電図変化がある場合は緊急での対応が必要です。テント状T波も有名。
ただし心電図所見がないから安全とは言えず、Kが6.5以上であれば緊急対応が必要と考えましょう。
また、一旦Kが下がってもリバウンド(例えばGI療法はKを細胞内に取り込むだけであり、Kを体外に排出する治療と合わせないと血清Kの値は元に戻ります、これをリバウンドといいます)することがあり、不整脈を有する高K血症の場合は集中治療室でこまめにKモニターしておく方が無難です。
緊急対応
緊急時の対応
※血行動体が不安定であれば緊急透析
徐脈で血圧低下→経皮ペーシング
不整脈の抑制〜Ca製剤〜
高K血症の対応
①不整脈の抑制〜Ca製剤〜
※ジギタリス内服していないことをチェック
- グルコン酸カルシウム(カルチコール)
8.5% 10mL(1A)を2分でゆっくり静注
効き目がなければ追加で1A投与
※基本はこちらで- 塩化カルシウム補正液(1mEq/mL)
1A 20mLを5分かけて静注
※ショック状態、カルチコールで
不十分な時に使用検討
高カリウム血症は何がヤバいかと言うと心室細動や心停止など、致死性の不整脈をおこすから怖いのです。その抑制のためにカルシウム製剤がいい、、、、というのは内科では常識。
Kを下げるのを優先したいところではありますが、GI療法やK低下の治療は奏功するのに15分以上かかります。Ca製剤は数分で効くのでCa製剤が優先です。
製剤は2種あり、ショック状態の患者であれば塩化カルシウム製剤の方がいいという報告がいくつかございます。理由として
・製剤のCa濃度が塩化カルシウムの方が高い
・塩化カルシウムの方がバイオアベイラビリティが高い
とか言われていますが、、、、実は成書で推奨されている塩化カルシウムは10%という本邦で取り扱いのない濃度であり、使うとすると補正液(1mEq/mL、これでも6%程度の濃度)の方になります(2%の方の製剤だとCa濃度はカルチコールと変わりません)。
基本は使用経験が多いカルチコールfirstで大丈夫です、難治例では塩化カルシウム補正液の使用を検討しましょう。
ただしジギタリス内服していると心毒性を助長するのでダメです、高Caは当然として高P血症も沈着を起こして塞栓起こす可能性が指摘されているので他電解質も確認して使用する癖を持ちましょう。
GI療法
どうせKが下がるのに時間がかかるので、Ca製剤で心臓を安定させるのが先でございます。その後にGI療法しましょう。
高K血症の対応
②GI療法
- 50%ブドウ糖
2A(40ml)ボーラス- ヒューマリン5単位(軽症ならこれで終了でいい)
追加治療が必要であれば以下を1時間でdrip
- 10%ブドウ糖 500mlに
- ヒューマリン10単位を混注
実はサルブタノール(ベネトリン)吸入0.5cc+NS 2mL吸入でも下がったりしますが、、、、GI療法には及ばないのであくまでも場繋ぎ程度の治療だと心得ましょう。
Kの体外排出
上記GI療法はKを細胞内に取り込んで血清中のKを下げるだけであり、体内Kの総量を減らす治療ではありません。なので体外にKを排出するという治療が必要なのです。
最近はロケルマといういい内服が出ており、グッとカリウムが下がるいい内服です。
高K血症の対応
③Kの体外排出
・ロケルマ 10gを1日3回
・ケイキサレート 1日15gから30g
(排便で出すので便通コントロールを)・ラシックス1A
脱水にならないように注意