血小板減少の書籍って、読んでもイマイチ勉強になった気がしないんですよね。自分なりになんでなのか考えると、血小板減少の鑑別の本質が見えてきました。
以下の記事も併せてチェックを。
参考文献
医学・医療の電子コンテンツ配信サービス医書.jpは医学専門書籍・雑誌の幅広い医療情報を共通プラットフォームより配信します
出血傾向の対応
出血傾向の対応
①身体所見やエピソードで出血傾向を疑う
②身体所見で以下の所見を探しに行く
- 粘膜出血、下血、血尿
(粘膜がらみの出血はred flag)- 眼瞼結膜の貧血
- 体表の紫斑、点状出血
- 関節内出血や筋肉内出血
→上記の所見と以下の採血で
血小板減少or凝固線溶系異常か分析
- PT、APTT
- 血小板
- フィブリノーゲン、d-dimer、FDP
※以下は血小板減少の場合の鑑別
③以下のemegencyな病態を伴う血小板減少の場合
FFPや血小板輸血などを検討し
原疾患の治療を急ぐ
- Plt 1万以下
- Plt 5万以下での活動性出血(消化管、脳、婦人科系)
- 粘膜出血を伴う血小板減少
- 血栓性微小血管症(TMA)
- 造血器悪性腫瘍(APLなどの急性白血病)
- ヘパリン起因性血小板減少症 (HIT)
ただし、③の輸血について、病態によっては輸血が禁忌(HIT→血小板輸血は禁忌、HUS、TTPも原則投与しない)なので疾患ごとに適応の評価をしましょう。
H and P
主訴として「よくあざ(見ると紫斑)ができます」とか「鼻からよく血が出ます」とかならわかりやすいんですが、「よく手足が腫れます」とか体表から紫斑や出血が確認できないパターンは難しいですね。浮腫が主訴で来た時にも出血傾向を疑うエピソードがあれば「深部出血の可能性は?」と思いを馳せるようにしましょう。
あとは倦怠感や「風邪が長引きます」という主訴で原疾患が白血病などの造血器悪性腫瘍のパターンも。風邪症状が一週間以上継続している場合は血算は提出するべきでしょう。
鼻出血、消化管出血などactiveな粘膜出血イベントで来院している場合も背景に出血傾向があるかチェックするべき。
病歴聴取においては出血や血栓イベントの家族歴、打撲による出血、鼻出血、抜歯の際の出血歴があるか、あるならいつからか(先天性か後天性かの鑑別になる)、以前も指摘されたことがあるか(反復しているかどうか)など。輸血歴(過去に血球減少の異常があったかどうか)やワクチンの接種歴も確認しておく。
女性なら月経などの生理についても確認(出血量が多くなってきていないか)、妊娠についてもチェックしておきましょう。妊娠性の血小板減少もあり、HELLP症候群(溶血、肝酵素上昇、血小板減少)だと緊急対応が必要になるからです。
Wf含めた薬剤歴も確認です。抗血栓薬はもちろん、NSAIDsも抗血小板作用があるためチェック。サプリや漢方薬での報告もあるので詳細に聴取を。
ヘパリンについては主治医が使っている認識がなくても使われている場合(ヘパリンロックや透析回路内での使用)があるので、看護師やMEに確認しましょう。
食事についてはくるみ(ウォールナッツ)や牛乳,クランベリージュースなどの関連も報告されているみたいですね。
身体所見は、一次止血の異常か、二次止血の異常かで所見が違います。
一次止血の問題であれば血小板や血管壁の問題であり、皮膚の点状出血(下腿に多い)を認め、誘因がない粘膜出血(口腔内や鼻、下血、血尿;こういった粘膜出血の所見はwet purpuraと呼ばれる)が認められます。
点状出血は本人に自覚がない場合もよくあるので、自分の目で皮疹を丁寧にチェックしましょう。
これに対し二次止血は凝固系の問題であり、筋肉や関節内出血、点状でない広範囲の紫斑、外傷後の粘膜出血がなどが特徴的です。
この中でwet purpuraは脳出血、消化管出血や脳出血など重篤な出血のリスクが高い状態だと考えるべきred flagです。
紫斑の分布においては、範囲が広くなくても肘、膝より近位に存在する場合、屈側や体幹部に紫斑がある場合は出血傾向と捉えましょう。打撲など物理接触の頻度が少ない箇所(というか普通に生活してぶつけないだろうそんなところ笑)なのに紫斑があるから変、という解釈です。
鑑別の流れ
血小板減少の鑑別
- 末梢血塗抹を確認する
以下の所見がないか検査室に確認
- 血小板凝集→偽性減少症
- 破砕赤血球→TMA
- 骨髄芽球→急性白血病、MDS
※赤線所見はemergencyなので
専門医に緊急コンサルト- 凝固能異常があるか
- あればDICを考慮
→原疾患の治療を- 薬剤性の可能性を考慮(参考サイトは以下)
https://www.ouhsc.edu/platelets/WEB%20Table%20Lab%202018.pdf
ヘパリン投与している場合、HITも考慮- 以下の病態のどれに当たるか
- 血液疾患
- 栄養失調
- 肝硬変、脾腫
- 感染症、膠原病
※感染症、膠原病なら発熱などの症状を訴えて
偶発的にPlt減少が指摘されることが多い
頻度的に多いのが偽性血小板減少症。血算用スピッツではEDTAという物質が入っており、これが血小板凝集を引き起こすため見かけ上血小板減少がおこります。もちろん出血傾向を示すことはありません。末梢血を確認すれば血小板凝集像の所見で一目瞭然でわかります、目視での血算カウントを検査室に確認するようにしましょう。凝固系スピッツなど他のスピッツで血小板カウントを依頼しても真の測定値が出ます。
破砕赤血球に関しては基本emegencyな病態でしか現れない所見であり、TMAという病態を示唆する所見です。TMAについては別記事で記載しますね。
TMAは溶血性貧血を合併しているので貧血も確実に存在しています、LDHも溶血のせいでバカ高い(最低でも400-500以上は欲しい)ので、血小板減少単独しか異常所見がない状況でTMAを考慮する状況はおそらくないと思われます。
骨髄芽球もemergencyな所見であり、即日血液内科専門医がいる病院への転院を考慮すべきです。この所見がある場合、基本骨髄抑制がかかっているため貧血や白血球異常など他の血球異常を認めることがほとんどですけどね。
なので血小板減少の所見が単独(かつ出血傾向がない)の異常所見であれば、緊急疾患の可能性は低いです。以下の病態のどれに当たるか、考えていきましょう。
薬剤性
その前に、薬剤チェックは簡単かつ診断も容易(薬剤中止して血小板が回復するかどうか見ればよし)なので先にチェックしておきましょう。
有名なのは抗菌薬、NSAIDs、H2ブロッカー、抗癌剤など。
好発期間は薬剤開始後2週間程度、中止すると1週間で良くなる(内科診断リファレンスより)とありますが、あくまでも目安ですね。以下のサイトなども参考に、被疑薬をリストアップしていきましょう。
https://www.ouhsc.edu/platelets/WEB%20Table%20Lab%202018.pdf
血小板減少の考え方
さて、大きく疾患群で分類すると
血液疾患
栄養失調
肝硬変、脾腫
感染症、膠原病
などがあげられます。
「なんで血小板が減っているのか」という機序にも分けて説明すると
・血小板の産生障害
・破壊、消費亢進
・分布異常、希釈
の大きく3つですね。
、、、、とまぁ色々書いてますが、どうでもいいです笑。
血小板減少の鑑別っていう記事を見ると、感染症やら血液疾患など名前がつらつら書いてある記事が多く、個人的には「ナンセンスだなぁ」とは個人的に思います。
この記事を見る人のパターンとして
①血液疾患を全く疑っておらず、外来or入院患者の採血でたまたま発見
②出血傾向のエピソードで、採血で血小板減少が発見
③無症状の健診でたまたま血小板減少が見つかった
の3パターンだと思いますが、感染症、膠原病の場合はもっぱら①です。なぜなら膠原病や感染症は発熱や皮疹など何らかの症状を訴えて受診しているはずであり、主訴がなく異常所見が「血小板減少のみ」であるシチュエーションが皆無だからです。
ヒントにはなると思いますよ。慢性炎症の場合普通は血小板は増加するはずであり、「慢性炎症があるのに血小板減少している」時点で疾患が限られるので鑑別のヒントにはなります、、、、、が、そんなシチュエーションでも鑑別の主軸となるのは『慢性炎症を呈する疾患』のはずであり、『血小板減少を呈する疾患』から鑑別しようとはならないはずです。
②の場合は鑑別どうこうの前に輸血などの緊急対応が優先されるはず、血液内科などの専門医にいかに早く引き継ぐかが味噌。
さて、残る③については「症状がそもそも出にくい血小板減少」ということになるはずなので薬剤性、造血器悪性腫瘍(の初期)、ITPなどが鑑別にあがり、DICやTMAなどはそもそも真っ先にあげる鑑別ではありません。
何を言いたいかというと、実臨床で血小板減少について考察する場合は
①発熱などはっきりした主訴があり、採血での複数異常がある中で血小板減少も認めた
②出血傾向をきたしており、血小板減少が発見された
③無症状の患者が健診や外来の採血でたまたま血小板減少が発見された
と症状があるかどうかで分類され、このパターン各々で考えるべき鑑別や対応は全く違ったものになるべきべきです。
なのに世の中「血小板減少についての鑑別」についてこういった鑑別疾患が一緒くたに書かれているせいで、「記事読んでみたけど、結局どうすりゃいいの?」と途方に暮れる、、、、、ような気がします笑。
ということで私は実臨床において血小板減少はこう考えています。
なんでもないか式血小板減少の鑑別
①発熱など症状が複数がある患者
→その症状をメインとして鑑別を考える
※血小板減少所見はあくまでも参考
※出血傾向の症状は除く②出血傾向のある血小板減少
→鑑別よりも輸血などの
緊急対応が優先
専門施設に紹介を
(最低限血液像を目視でcheck
芽球や破砕RBCの有無確認)
③全くの無症状で偶発的に指摘
→血小板減少をメインにして
薬剤性、血液疾患を念頭に鑑別
※肝硬変、アルコール含む栄養障害は
病歴聴取で簡単に判明するので
あらかじめ聞いておく
はい、んでまぁここまで記事を読んでいる時点で多分③の「無症状」の場合が多いはず。その場合の鑑別について、以下では述べようと思います。
あとは、一応理解しやすいように血小板減少の機序ごとにまとめてみました。まぁ、当然いくつもの機序が被っている病態(肝硬変なら産生障害+脾腫など)もあるので、あくまでも参考です。
しかも、機序を思い浮かべたところで実臨床で区別しようがないし笑(患者のデータみて「これは産生障害っぽいな、、、、」とはなりませんよね)。
強いて血液所見で注目するならMPV(mean platelet volume)。貧血におけるMCVみたいなもんで、血小板のサイズを表します。
産生障害
産生障害による血小板減少
- 肝硬変含めた肝疾患
- 骨髄疾患(MPV<8が目安)
- 栄養障害(vitB12, 葉酸、銅など)
(アルコール依存も原因)
骨髄疾患だとそもそもまともな血小板が作られないので、MPVは小さくなります。8未満。
肝硬変ではトロンボポエチン低下による血小板の産生低下がみられます。
アルコールも栄養障害によって血小板が減ります。その場合他血球も減っている場合が多いですけどね。
消費、破壊
消費、破壊による血小板減少
- 免疫性血小板減少症(ITP);MPV>10が1つ目安
- DIC
- 血栓性微小血管症(TMA)
- 脾腫
分布異常
分布異常による血小板減少
脾腫
もっぱら肝硬変ですね。脾臓は平常時から何割かの血小板をプールして溜め込んでおり、脾腫がある場合末梢血小板がさらに脾臓にプールされるためみかけ上血小板減少になるというわけです。特発性門脈圧亢進症なども鑑別かと。