はじめに
この疾患を見落とすパターンは大体決まっていて
SAHの見落とし
①そもそも鑑別にあげなかった
→どういう主訴で来院するか知る②鑑別にあげてもCTを撮像しなかった
→身体所見で否定できる疾患ではないことを知る③CTを撮像しても正しく診断できなかった
→CTの限界、どういう見落としパターンがあるのか知る
この3パターンに大別されるかと思います。以下の記事でお勉強してください。
History and Physical
主訴
- 頭痛
- (一過性)意識障害
- 嘔気、嘔吐
- 痙攣
カメレオン的主訴
心肺停止、ショック
複視、眼痛、顔面痛、頚部痛
胸痛、腹痛(→脊髄のくも膜下出血を考慮)
失神(→意識障害や頭痛がある場合考慮)
心電図異常、BNP高値
頭痛が主訴ならさすがに鑑別にあげると思うのですが、頭痛以外の上記主訴でも来うることを知ってほしい。
自験例でSAH→たこつぼ心筋症による心原性ショックの症例があり、その時は胸痛ばかり訴えて頭痛の訴えは全くありませんでした(家族への病歴聴取で、ここ数日頭痛でずっと病院にかかっていたというwarning headacheの情報がとれ、頭部CTで診断しました)。
心頭のpearl
心疾患で一度は脳血管障害に想いを馳せる
脳血管疾患を疑ったら一度は心臓に想いを馳せる
目が痛いとか、顔が痛いとか一見表面っぽい痛みの訴えをした場合も要注意で、どうしても「皮膚や目の病気か、、、、」って思ってしまい脳血管まで意識がいかないと思うんですよね。
でもこういったプレゼンテーションで来たSAHなら、onsetはsudden-acute onsetのはず。目や皮膚の疾患でacute-suddenの疾患は相当めずらしいので「もしかして脳の疾患、、、、?」と思いを馳せてほしいですね。
あとは軽度の意識障害であることを認識できずに鑑別から外すってパターンもありますね。
(意識障害があります!と患者が言うわけないので、軽度の意識障害は医師側から疑わないと容易に見落とします)
意識障害を見落とさないポイントは以下記事参照。
病歴
主訴が頭痛の場合、必ず鑑別にあげて欲しい疾患ではあります。雷鳴様頭痛なら見落とすことはおそらくない(さすがにCTは撮像する)と思うのですが、、、、。
個人的に怖い主訴は「数日前からの頭痛」っていうパターン。病歴聴取の時にonsetの病歴聴取をサボってsudden onsetを医療者側が認識できない、、、、って症例は何例か見たことがあります。
典型的なのは労作・性交・排便時、怒った時など興奮時、、、明らかなきっかけがあり生じた頭痛は画像精査対象ですね。
また、頭痛の先行エピソードがないかも聴取しておきたい。なぜならSAHの患者のうち約30~50%の患者が、SAHに先行して急性および重度の頭痛(センチネル頭痛、警告出血、warning headacheなどと言われる)を生じるという報告もあるからです(しかも発症の6~20日前!!と幅広い)。
risk因子
喫煙、高血圧、大量飲酒歴は3大リスクであり
第一度近親者にSAHの家族歴がある場合や多発表胞腎、Marfan症候群もリスク因子。
身体診察
まず、以下のpearlの徹底。
SAHを疑った場合のpearl
頭痛患者で精査を要すると医師側が判断した場合
身体診察の結果でCTを省くことはあってはならない※CTを撮像するかどうかは
病歴とリスク聴取の時点で決定するべき
脳出血や脳梗塞と違い、SAHは局所神経兆候を呈することはむしろ少ない(脳実質にダメージがあるわけではないから)。なので神経学的兆候が何もないからSAHではないって議論は大間違いです。
基本的に身体所見はrule inには役立つ(鑑別疾患を想起するきっかけにはなる)ものの、rule outには使わない(身体所見単独で、特定の疾患を鑑別から除外するのは危険)という意識をつけましょう。
、、、、、、、とはいったものの、陽性所見があれば診断には役立つことは間違いない。ではどういった所見がありうるかチェックしていきましょう。
髄膜刺激徴候は所見が出現するのに時間がかかるので、SAHの除外には使えません。
外眼筋運動よりも瞳孔散大が目立つ動限神経麻痺は外部からの動眼神経の圧迫を示唆するため、動脈瘤が関与している可能性が考えられます。
検査
まぁ1にも2にも頭部CTですね笑。粗大なのはいいんですけど微小なSAHをいかにして見逃さないようにするかが大事。大事なのは左右差でございます。
SAHを疑った際の2checkpoint
- 脳槽の不明瞭化
- 脳溝の左右差
ぶっちゃけ誰が見てもわかるSAHの画像は判読もクソもありません。大事なのが軽微な出血を見逃さないこと。上記の2ポイントに注意を払いましょう。
あと、入院時に心電図を撮像しましょう。何らかの心電図異常を併発していることは珍しくないため(QT延長、巨大陰性T波など)いつから心電図異常があったかを判断したり、不整脈リスクを把握するためにも心電図は取っておくべきです。