咽頭痛/頚部痛の対応、鑑別;①救外編

医学総論

はじめに

※解説の都合上、咽頭痛も頚部痛もまとめて解説します。

救急外来でこの主訴を聞くと「風邪かよ」という気分になりがちなこの主訴。意外に致死的な疾患が隠れていることを知っておきましょう。

しかも当初は風邪だったのに、風邪を拗らせて致死的な疾患になっていることもあります。

「これはきちんと調べた方が良さそうだな」というred flagな病歴、フィジカルを知っておきましょう。

central illustrarion

killer disease

咽頭痛/頚部痛のkiller disease

①killer sore throat
(“気道内”感染症)

  • 急性喉頭蓋炎
  • 扁桃周囲膿瘍
  • 咽後膿瘍
  • Lemierre症候群
  • Ludwigs angina(顎下蜂窩織炎)
  • (アナフィラキシー)

②心血管性疾患

  • 急性冠症候群(ACS)
  • 大動脈解離(DA)
  • くも膜下出血(SAH)
  • 椎骨動脈解離
  • 硬膜外血腫
  • (脊髄梗塞)

③感染症
(”気道外”感染症)

  • 化膿性脊椎炎
  • 硬膜外膿瘍
  • 髄膜炎

④非感染症

  • 急性白血病
  • 無顆粒球症、薬剤性過敏性症候群

red flag sign

①killer sore throat

この疾患群は口腔内、上気道、頚部感染症に属し、進行すると気道閉塞、もしくは縦隔炎に進行し死亡リスクが高い点でkillerの名を冠している。

⭐️流涎
→口腔内、喉頭蓋などの重度炎症のため液体さえ飲み込めず
 口から涎を流している
→「よだれも飲み込めないほど痛い」という訴え

⭐️開口障害
→扁桃周囲膿瘍などで咀嚼筋へ炎症が波及し
 口が開けなくなる
(目安として3横指以下しか口が開けなければ開口障害ととる)
→「いつもと比べて口が開きにくいですか?
 (身体所見が微妙な時はこう聞く)

ちなみに、上2つのどちらかが陽性な場合、気道閉塞のhigh risk症例なので速攻で耳鼻科か救急科、麻酔科などの緊急処置や気道確保に精通している医師にコンサルト、コンサルトできない状況であれば検査よりも転院搬送の準備をすすめることが優先事項になります。そして絶対に仰臥位にしないこと!(舌根沈下などで気道閉塞する可能性がある)

あくまで経験例ですが、上記症状が陽性な人なら「苦しくて横になれません」といって自然と座位を好んでいる患者が多い気がします。

②心血管性疾患

こいつらを想起するポイントはなんと言ってもacuteからsuddenの急性onsetです。他のkiller diseaseやcommon disease含め、基本的に炎症性疾患なので、gradual onsetにしかならないはず。Crowned dens症候群(CDS)はsudden onsetになることがありますが、、、。

あとは発熱もなく、炎症反応も”基本は”陰性のはず、ここが①との大きな鑑別点でしょう。

③④も危険な疾患ではあるんですが、①②が刻一刻を争うという意味でやはり最重要の鑑別だと思います。最低限咽頭痛の病歴なら上3つの項目を聴取するべき。

診察

痛みの鑑別を考える時に常に意識してほしいのが

この痛みはどの臓器のせいなんだろう

疾患臓器に思いを馳せることが最重要。ここを意識するだけで病歴聴取の仕方や身体診察のクオリティがグッとあがります。

病歴聴取

Onset

acute-sudden onsetはred flag signです。心血管性疾患の鑑別を必ずしましょう。

Association, Alleviative, Aggravating

いつもと順番が違いますが、理由があります。咽頭痛、もしくは頚部痛を主訴で来た時に「本当にこの人は”のど”が痛いのか?」って目で見てほしいんですよね。そのために以下の質問を早めにしてください。

⭐️食事、飲水など嚥下時に再現されるか

⭐️安静時の咽頭痛の有無

⭐️食事、飲水など嚥下時に再現されるかどうか

当たり前ですが、本当にのど、すなわち咽頭の問題であるならば、嚥下の際に痛みが誘発されるはずです(痛みまでいかなくても、違和感はあるはず)。

はっきり咽頭痛の訴えがあるのに嚥下で増悪しない、変わらないということは、病変が(口腔、咽頭含めて)上気道ではないと推察されます。少なくとも風邪、咽頭炎と診断していい病態ではなく、心血管性疾患や髄膜炎など、幅広い鑑別が必要になります。

、、、、こうなると咽頭痛の鑑別というか頚部痛の鑑別になりますけどね笑。なのでこの記事ではまとめて書いています。

⭐️安静時に痛みがない

これも風邪や咽頭炎としては非典型的な病歴であり、甲状腺、茎状突起、食道、血管、舌咽神経、嚥下に関わる筋炎や腱炎などを病変の首座と考えるべきです。

さて、次はassociationです。red flag signが陽性で病気の首座が咽頭含めた上気道だと判断した場合はkiller sore throatを真っ先に考慮しなければなりません。詳しい鑑別については別記事で書きます。

Killer sore throatを想起する随伴症状

流涎、開口障害、嚥下困難、呼吸苦、嗄声

次にacute-sudden onsetで嚥下時の痛みがない場合、真っ先に考慮するのは心血管性疾患です。

下記の症状がどれか随伴していたら、、、、、とりあえず帰宅の選択肢は頭から消してください笑。

心血管性疾患を想起する随伴症状

胸痛、頭痛、嘔気嘔吐、呼吸苦
なんらかの神経症状

あとのkiller diseaseは基本感染症絡みなので発熱が随伴症状として出てくるはずです。

では、心血管性でもなさそうで、発熱があってかつkiller sore throatでもなさそうな場合、必然的に上気道以外の感染focusを探しにいくこととなります。

んで緊急性があるのは髄膜炎や硬膜外膿瘍含めた中枢神経感染か化膿性脊椎炎です。こいつらは身体所見で区別がつくことが多いので次項で解説します。

最後に1つだけ。「風邪にしては咽頭痛が長すぎないか、、、、、?」って時で、特に若年者の場合はHIVを一度は想起するようにしてください。なので重要なのは性行為歴の聴取。

あとは無顆粒球症や薬剤性過敏性症候群のリスクになるような薬剤歴も確認できればperfectですね。

身体所見

さて、ポイントから言っておくと、killer sore throatや心血管性疾患は身体所見で決めうちできる疾患が少ないです。なので身体所見で目立った身体所見がなくてもkiller diseaseの否定には寄与しないので「診察では問題なかったです!!」と安心するべからず。

あとは高確率でkiller sore throatを疑っている場合、無理な咽頭の診察で気道閉塞を助長する危険性があるので

  • 舌圧子で無理に咽頭の診察を行わない
  • 仰臥位にしない
  • 挿管で喉頭痙攣リスクがあるため
    熟練した医師に気道確保を頼む
    (一度で決める自信がなければ
     無理に挿管しない)

が大事かなと思います。

身体所見で決め打ちしやすいのが扁桃周囲膿瘍かLudwigs angina(顎下蜂窩織炎)ですね。逆にこいつら見逃すと恥ずかしいので、最低限所見は知っておきましょう。

killer sore throatの身体所見

急性喉頭蓋炎
→stridor 、舌骨の圧痛

扁桃周囲膿瘍
→扁桃腫脹、口蓋垂の偏位

Lemierre症候群
→頚静脈の圧痛

Ludwigs angina
→顎下腫脹

咽頭痛へのアプローチ
咽頭痛は救急外来で非常にcommonな症候で、圧倒的に軽症なウイルス性咽頭炎が多いですが、見逃すと致死的に至る感染症も多く存在します。”Killer sore throat”を見逃さないためには解剖の理解と、解剖と対

上記サイトが解剖詳しくのっています。

さて、あとkiller diseaseで残っているのが気道以外の感染症で、身体所見で診断しやすいのが髄膜炎か化膿性脊椎炎でしょう。

こいつらは頚部痛+発熱の病歴では必ず鑑別にあがってくる感染症ですが、身体所見で正直一目瞭然なのでは、、、、と思ってます。

髄膜炎は項部硬直、脊椎炎は首の可動痛であり、一見どちらも「動かすと首が痛い」という病歴で区別がつかないように思えますが、髄膜炎の場合、首を前屈させると「痛い痛い」と言いながらなんだかんだで多少首は曲がるのに対し、化膿性脊椎炎の場合は「1mmでも動かすと首の痛みが襲ってくるならできれば触らないでくれ」という感じで全然首が曲がらない人が多いイメージ。

項部硬直は回旋に関してはなんともないですが、化膿性脊椎炎は回旋でも症状が誘発されるのもポイントかと。CDSも化膿性脊椎炎に近い身体所見を呈しますが、CDSはあくまで関節炎なので原則脊椎の叩打痛はない、という点で区別できるかと。

、、、、まぁ、化膿性脊椎炎は髄液に感染が波及して2次的に髄膜炎を発症することがあるので、合併していても全然おかしくないですが。

検査

心血管性疾患が鑑別にあがるなら採血は必須、トロポニン、d-dなど含めてとるように。各種検査については各疾患の記事で説明します。白血病、無顆粒球症は血算とれば基本診断可能ですね。

画像検査に関しては各疾患の記事で説明しますが、killer sore throatを疑っている場合、CTを撮像しようと仰臥位にして気道閉塞する可能性があるので、躍起になって取らなくていいです。

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