はじめに
「声がかれた」と訴えて受診する患者は少なくありません。
単なる風邪と思われがちですが、実は重篤な疾患のサインであることもあります。今回は、嗄声の原因を体系的に整理し、臨床現場で押さえておくべきポイントをまとめます。
1. 気道・声帯の器質的疾患
まずは局所の問題を確認します。
- 急性上気道炎
最も一般的な原因。風邪様症状(咽頭痛、鼻汁、咳)を伴うことが多く、自然軽快します。 - Killer sore throat(危険な咽頭痛)
強い咽頭痛+発熱+咽頭所見異常があれば要注意。
扁桃周囲膿瘍、喉頭蓋炎など、急速に気道閉塞を来す可能性があります。 - 呼吸困難を伴う場合
アナフィラキシーや気道内異物を鑑別に。
緊急度が高く、即対応が必要です。 - 慢性経過の嗄声
・甲状腺機能低下症 → 粘液水腫による声帯の浮腫(疑い)
・甲状腺腫瘍 → 反回神経や声帯への圧迫
・喉頭癌、声帯ポリープなどの器質的疾患
2. 神経麻痺
声帯運動に関わる神経障害も重要です。
- 反回神経麻痺
甲状腺癌・縦隔腫瘍・肺癌などで圧迫されることがあります。 - 神経筋疾患
筋萎縮性側索硬化症(ALS)や重症筋無力症など。 - Ortner症候群(cardio-vocal症候群)
左反回神経が大動脈弓付近で圧迫されることで嗄声が出る病態。
僧帽弁狭窄による左房拡大、大動脈瘤、肺性心、心房粘液腫などが原因になります。
→ 嗄声=耳鼻科だけでなく、心臓・血管疾患のサインかも!
3. 発声器官の過労・機能性障害
- 職業性嗄声(教師・コールセンター・歌手)
声の使い過ぎによる声帯炎や機能性発声障害。 - 精神的ストレスが背景にある機能性発声障害も忘れずに。
4. 血管炎など全身性疾患
血管炎(例:多発血管炎性肉芽腫症)で上気道病変が原因になることもあります。
嗄声が長引き、局所疾患で説明がつかない場合は膠原病のチェックも視野に。
まぁ、全身疾患の場合は嗄声以外にも症状がある場合がほとんどです。
ぜひ他の症状に目を向けましょう。