不整脈の対応;③VT(stormも含めて)

循環器

はじめに

手前味噌ですが、まずwide QRS tachycardiaの初期対応ができるようになってからこの記事を読んだほうが良いかと思われます。

「どうやらVTっぽいな」と思った時に、不整脈非専門の循環器内科がどう考えているか。

VTを疑うシチュエーション

はっきり言っておきますが、心電図単独でVTかどうかを判別するのは循環器内科でも相当難しいです(不整脈専門ならまだしも)。

大事なことは

「wide QRS tachycardiaは困ったらVTとして対応」
「常に電気的除細動を意識する」

あとは、

「虚血性心疾患がらみのwide QRS tachycardiaはVTとして対応しろ」

っていうのは昔からある格言ですね。

VTの薬物治療

当たり前ですが薬物を考慮するのは血圧が保たれている単形成VTの状況に限られますからね。

薬物で非専門医でも使いやすいのはアミオダロンとリドカイン、ともに肝代謝なので腎機能ほぼ関係なく使える点と安全域が広いので研修医でも使える点でおすすめです。困ったらアミオダロンの方針でいい気がしますねぇ。

アミオダロンは「こんなに複雑な投与法のもの使えないよ、、、、」と思うかもしれませんがむしろ逆で、循環器内科でも以下の使い方しかしないんですよ。医師の臨床経験による投与量や速度の匙加減がない。ということで非循環器内科でも循環器専門医と同等の治療効果が期待できるってのがアミオダロンという薬物の強みだと思います。なのでみなさんも以下の使い方であれば怒られることは基本ありません。うっ血性心不全でも使える静注薬なので非常におすすめ。

アミオダロン(アンカロン)(150mg/3mL)
※溶媒はブドウ糖のみ使用可

5/6A(125mg/2.5mL)+ブドウ糖100mL
600ml/hで10分で初期急速投与
※①で血圧下がることがあり
状態によってはskip

②5A(750mg/15mL)+ブドウ糖500mL
33ml/hで6時間投与した後(200mL投与後)
17ml/hに減量し継続

ただし、上記通りアミオダロンの投与やレシピは少し複雑、準備の時点で時間がかかるので緊急の状況で使おうにも「まだ準備できていません!!」ってなることが多いです。

お試しに使いやすいのがリドカイン。大体シリンジになっていてそのままivできる仕様になってます(以下テルモHPから引用)。

リドカイン(100mg/5mL)

リドカイン1A(100mg/5mL)を
溶媒100mLに溶かして半分を全開

もしくは3分かけて0.5A静注
(現場の人員によってどちらの方法でも)

それでも止まらなければ五分後に
もう半分を同様の手技で投与

βブロッカーのオノアクトもVTには使われます。

ランジオロール(オノアクト)(50mg/1V)

3V(150mg/3V)+溶媒50mL 計50mL
3ml/hで開始(血圧不安なら2ml/h)
1ml/hずつ調整
3γから10γの間で管理

VT storm

VT stormとはDCとか薬物治療の初期対応でも全然VTがおさまらない状態のことを言います(厳密な定義は以下略)。この状態になれば下級医単独で見る状況では決してないと思いますが、一応解説を。

対応や治療も当然大事なんですが、そもそも「なんでこの人はVTが止まらないんだ?」って誘因、原疾患に思いを馳せる癖(僕の信条ですが治療そのものより原因究明医師として一番大事なことだと思ってますをつけてください。

特にACSでVTstormとなっている場合緊急冠動脈造影の必要があるので、ACSの可能性は常に頭においておきましょう。

あとは心不全のコントロール不良やshockでVTになっている場合、うっ血やshockを解消しないと永遠にVTが出続けます。甲状腺ホルモンも一度はチェックしておきましょう。

VTstormの対応

まずsinusに復帰した場合の心電図を撮像してQT時間に注目、500msecを超えるような場合はTdPとして対応する方が無難かと思われます。stormの場合はペーシングがほぼ必須なのでマグネゾールiv、またはカリウム補正しながらカテ室へ移動する準備をすすめましょう。

また、深鎮静も1つの手段として覚えておきましょう。大体は呼吸抑制かかるくらい深鎮静するので、挿管管理とセットで考えますね。

torsades de pointesの対応
※stormの場合、ペーシングがほぼ必須

①マグネゾール1A(2g/20mL)を
 溶媒100mLに溶かして全開
 (※2分かけて1A静注でもいいけど
 人不足なら上記対応で)

②カリウム補正(K>4.5-5.0が目標)

③一時的ペーシングして
 HR90-100へ
 (※つなぎとして
 除細動機の経皮ペーシングも可)

④(ペーシングができなければ
 イソプロテレノール1A(0.2mg/1mL)を
 ブドウ糖500mLで希釈
 5ml/min(300mL/h)で開始)
※ACSの場合は使っちゃダメ!

⑤QT延長の原因薬剤の中止

上記でもダメなら深鎮静して挿管
緊急冠動脈造影、VA-ECMOの検討

VT stormの対応

★sinusの心電図にてQT時間check
→QTc>500msecの場合はTdPの対応
→QTc<500msecの場合はdrug, shockを繰り返す

  • アミオダロン2A(300mg/6mL)
  • リドカイン1A(100mg/5mL)
  • シンビット 0.3mg✖️BWでiv
  • オノアクト 3γから10γ

上記でもダメなら深鎮静して挿管+ペーシング
緊急冠動脈造影、VA-ECMOの検討

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