ひとりでできる補助循環;①ECMO

循環器

はじめに

慣れると、意外に注目すべき点って少ないです。

以下記事は「何回かECMOに触れたことあるけどいまいち全容が掴めない」人たち向けに作りました。一から勉強したい人は以下の参考文献買って読んだ方がいいです。

以下近森病院 細田勇人Dr監修、スライドも拝借しています。

あと、下の本は神本です。補助循環の勉強したい人はとりあえずこれ買っとけ。

参考文献

明日のアクションが変わる 補助循環の極意 教えます【電子版】 | 医書.jp
循環器救急においてとくに重要な手技のひとつである“補助循環管理”は、著者の前著『循環器救急の真髄 教えま<br>す』のなかでも、とくに好評だったテーマ。そこで本書は第2弾として補助循環の管理にテーマを絞り、著者が国<br>立循環器病研究セン...

補助循環点検表

適応

一言で言うと心原性ショック。
厳密な適応は、、、、、まぁ明言化するのが難しい笑。後日追記します。

挿入からICU入室まで

※鼠径手術痕やope情報があれば仕入れておく

まず4or5Frのショートシースで血管を確保、基本は右FA、FV確保が多い気がしますね。

基本2本とる必要があるので、ワイヤー2本まず入れてからシースを順番に入れていくことが多いです。

Vワイヤー→Aワイヤー→Aシース→Vシース

※シースを後にいれる理由は?
→穿刺の時に先にシースが入っていると、穿刺の際にシース突き破る可能性がある

※Vから確保する理由は?
→Aを刺したところから血腫ができる可能性があるので
(ECPR時だとAが触れているかVが触れているか正直わかりません、とりあえず確保してAだった、、、、となるのは不可抗力なのでしかたないでしょう)

お次にダイレーションです。青→ピンク→赤→紫の順番(※これはメーカーによって違うかも、自施設での確認を)に太くなっており、この順番でダイレーションしていきます。

心停止時のECPRの場合、悠長にダイレーションしている暇はないので一気に紫の一番太めのやつを突っ込むことはあります。

その後脱血管、送血管を挿入、内筒引き抜いてクランプ。かん子を待機させておくのが大事。

内筒抜く時に脱血管の先端位置を透視で確認しながら抜去(管が引けてこないように)

その時青と赤の接続部も予め外しておき、繋ぐ時に水を入れながら接続するべし。

位置としては脱血管先端はSVCから右房まで。
※脱血管は側溝がついているので、脱血不良を防ぐため深めに入れる。

送血管はできる限り奥まで入れる。

ECMOも太さが色々ありますが、基本入るなら太めのほうがいいです。

なぜなら循環不全の解消がECMOの最優先課題であり、細めのサイズを入れて「結局循環血漿量が足りませんでした」となることを回避したいからです。

細めを入れる理由としては体格が小さくFAのサイズも小さいなど物理的に太めの管が入らない場合です。

ポイント:ECMOを入れる時はSVCまで脱血管を上げてから導入した方が良い。
理由はどうしてもタンポだと血液がRAに戻ってこなくなるので、上肢からの血液はSVCから下肢からの血液はIVCから抜くといったイメージで脱血する方がいい。実際に、タンポ症例でSVCまで脱血管を上げた場合とIVC-RAぐらいに脱血管を留置した場合で脱血が異なった症例報告もあるとか。

大体輸血やアルブミンも必要になるので採血するときにクロスマッチなど取っておきましょう。

入れた後はエコー(FAST)かCTで粗大な出血などを評価しましょう。カテ室退室の時に頭から体幹までCT取っておくと急変の時に比較できるので便利です。

ECMO管理の概略

ショックの4フェーズ

①Salvage期:蘇生期。灌流圧維持が目標。輸液投与,カテコラミン開始
②Optimization期:不安定期。酸素需給バランスの維持が目標
③Stabilization期:安定期。輸液はほぼ不要,カテコラミン減量
④De-escalation期:回復期,利尿期。元の体液量に

ショックの場合は上記4フェーズに分けることが多く、ECMOさえ導入できれば①は最低限脱したと考えていいでしょう。

③までいければECMOから離脱できるかを日々検討するだけなので問題が②。

②でまだ循環動体が不安定な場合はとにかく輸血、補液しまくって循環動体を安定させるしかありません。ここは「過剰輸液のデメリットが〜〜」とか言っている場合ではありません、一度ショックにするほうがよっぽど予後が悪くなるのですから。

ただし注意点が2つあって、何回輸血しても循環が安定しなければ

①活動性出血の評価

②心タンポなど機械的合併症の評価

を一度は考慮しましょう。

日々の管理方法

まず認識しなければいけないのは

ECMOは時間稼ぎのdeviceだということです。

治療deviceではないので、時間稼ぎしている間になんとか全身と心臓がECMOなしで生きていけるような状態まで持っていくイメージ。

抜けなくても最悪IABPやImpellaに交換が可能な状態まで持っていけばいいのです。

ECMOで確認するのは4ポイント。

ECMO daily checkpoints

⭐️①循環不全の改善

⭐️②原疾患の改善

⭐️③心機能の改善

⭐️④合併症の有無

①循環不全の改善

下記指標が改善しているかどうかを確認です。

●SvO2

●lactate(乳酸)

●肝機能(Bil, AST, ALT)

●腎機能(Cre, 尿量>0.5ml/kg/h)

上記所見が全て改善傾向であれば循環不全は脱したと考えていいでしょう。

では、上記所見が改善していない場合はどうするか。

まず、上記すべてが増悪している場合、循環不全の真っ最中の可能性が高くemergencyです

SvO2の低下

敗血症などショックなのにSvO2が上昇する例外は除き、基本ショックの症例、循環不全の症例はSvO2が低下します。しかもlacや採血より先に低下するので、ショックを見つける際に一番感度が高い所見がSvO2です

逆に言うとICU患者でSvO2が低下傾向であればlac上昇や採血での異常がなくても介入するべきです。

60以上あれば基本大丈夫ですが、値自体よりもトレンドが重要です。

低下傾向であればSvO2 60%でも安心できません。介入しましょう。

基本はSvO2が低下するのは

●酸素需要が多すぎる

●酸素供給が少なすぎる

のどちらか(もしくは両方)です。

逆に考えると、目の前で循環不全の患者がいる時は酸素需要を減らし酸素供給を増やせば循環不全は解消されるはず

★酸素需要が多すぎる場合

●発熱

●せん妄

●シバリング

●食事

●運動

●呼吸(努力)

などがあげられ、各因子に介入していく必要があります。

そして一番忘れてはいけないのは

⭐️しっかり鎮痛、鎮静ができているか

です。

困った時は大体深鎮静すればどうにかなります笑。

もちろん漫然と深鎮静を続けると抜管日数の長期化、ICU入室期間延長につながるので、あくまで

酸素需要を抑えないとまずい期間のみに限定しましょう。

上記のスライドの通り、酸素供給については数値化できるので、

●CO(CI)→だいたいSGカテーテルが入っているのでその値を参照

●Hb

●SaO2(SpO2)

の値をそれぞれ上昇させる処置を行う、という流れになります。

んで最強の解決手段として輸血しまくってECMO流量を上げることさえまず覚えておけばいいでしょう。ECMO流量さえ保たれれば死ぬことはない。

ただし結局原因に介入しなければいくら頑張っても循環不全から脱せないので、同時並行で原因にも介入するべき。

lactate(乳酸)の上昇

前述の通り、4つのcheckpointが全て増悪していれば循環不全の所見ですが、乳酸だけ増悪していて、他の所見は変わらなければ循環不全というよりは乳酸アシドーシスをきたす疾患の鑑別ということになります。

怖いのはNOMIを含めた臓器虚血ですね。ECMO挿入側の下肢虚血やNOMIは絶対に確認したい。腹部の違和感を訴えている場合や透析導入されている場合は特にCT検査の閾値を低く設定しましょう。

あとは痙攣発作、vitB1欠乏などがメジャーな鑑別でしょうか。

肝機能、腎機能の増悪

●肝機能(Bil, AST, ALT)

●腎機能(Cre, 尿量>0.5ml/kg/h)

こいつらが単独で悪くなっている時は循環不全の可能性は低いと考えましょう。

肝機能障害の鑑別、腎機能障害の鑑別をすればいいだけです。

②原疾患の改善

●虚血性心疾患

●心筋炎

●肺塞栓症

●心筋症急性増悪

だいたい上記疾患で挿入することが多いECMOですが、治療がうまくいってない時は上記の治療が本当にうまくいっているのかを考慮しましょう。

③心機能の改善

上記値が基準値をクリアしていればECMO抜去の検討ができます。

●VTI、A弁開放時間 

心機能改善とともに上記測定値は上昇していきます。

この2つは測定困難な状況があって

※ECMO流量が多い場合

※Impella挿入 (VTIは一応測定可能だが、抜去の目安がはっきりしない)

●mixing zone

基本はみぎradialにAlineをとって、ECMO血とのPaO2を比較して判断するわけですが(詳細は成書参照)、PaO2が60を下回っている場合はNorth-south syndromeに注意しなければなりません。(特にECPELLA時に注意)。

自己肺の機能が十分でない場合でかつある程度自己心が回っている状態だと酸素化が悪い血液が脳に潅流されてしまします。

●VV-ECMOへのgrade down(左心改善ならこっち)

●VAV-ECMOへのgrade up(左心が悪い場合が多いのでこっちが多いかも)

●ECMOの流量あげてmixing zoneを自己心側に(ECPELLA時はImpella Pレベル下げて、ECMOメインで肺うっ血が良くなるまでで粘る)

④合併症の有無

●出血

穿刺部出血の対応表

○ガーゼなどでの圧迫

○輸血

○ヘパリンを緩めるor 止める

主に穿刺部からの出血ですが、基本圧迫(俵ガーゼで上から押さえたり)やナートしか方法がないです。

キシロカイン撒いて末梢血管閉めることもありますがあんまり効きませんねぇ。

あとはHb下がれば輸血、ヘパリンの管理を緩める(APTTorACTの目標値を下げる)ぐらいしか方法がないです。

ACT 180~200 秒,APTT 50~65秒ぐらいが目安ですが,出血リスクのある患者に対しては、ACT 160~180秒を目安に、 ヘパリン減量を検討することも可能です。

上記でコントロールできなければECMO抜去を考慮しなければなりません。本当にどうしようもないときはヘパリンフリーで管理することもありますが、、、、、。回路が急に止まるリスクは家族にも説明し、急変時対応については予め医療者と家族で共有する必要があります。

あ、もし頻回輸血が必要なら活動性出血を必ず除外しましょう。特に腹腔内出血。CT撮像の閾値は低くすべきです。

適宜FASTやCTなど画像検査で確認する癖をつけるといいですね。ただでさえヘパリンで易出血状態なので。

●虚血(逆刺しの回路含めて)

CK上昇やCRT、下肢色調に注目、下肢ドプラも逐一確認。

回路の血色も確認しましょう。

時々キンクして回路が詰まっていることがあるので、、、。

ECMO離脱の検討

ECMOの流量を2L以下まで下げれたなら離脱の検討、クランプテストです。

ACTがしっかり伸びていることを確認して回路をクランプ、以下の指標がどうなるかcheck。

●SvO2

●BP, HR, PAWP

上記の値がべらぼうに変化し、循環不全の様相を呈するなら、まだ補助循環が必要ということで、

●なにか介入できる因子がないか探す

●Impella, IABPへのgrade down

●inotropeの追加

●心内圧の適正化

などを考慮します。

trouble shooting

脱血不良

  • volume不足
    →輸血、メインの増量→脱血管追加(VVA-ECMOへのgrade up)
  • 脱血管の位置調整
    →なるべく上の方まであげる。カテ室で位置調整
  • 脱血管のkink、穿刺部trouble
  • 出血、sepsisなどの前負荷不足
    →補液+原疾患に対する介入
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